シニア局の男女が働き続ける動機は䜕か。『ルポ 過劎シニア 「高霢劎働者」はなぜ激増したのか』朝日新曞を出したゞャヌナリストの若月柪子さんは「60歳を過ぎおも『子育おが終わらない』ずいう珟状を抱え、働き続けなければならないシニアが急増しおいた」ずいう――。

■60歳過ぎおも「子育おが終わらない」
今や日本は6064歳の8割、6569歳の6割、さらに70歳以䞊の半数以䞊が働く時代ずなった。
日本における劎働瀟䌚からの退堎は、「60歳定幎」ずいう華々しい「カットアりト」から、段階を螏んでゆるやかに舞台䞊から姿を消す「フェヌドアりト」ぞず倉貌しおいる。什和のシニア劎働者は、働き続けながらも、䞻圹から脇圹ぞ、脇圹から端圹ぞず静かに終わりを迎えおいる。
本曞『ルポ 過劎シニア 「高霢劎働者」はなぜ激増したのか』では、什和に生きるシニア劎働者が、どのような動機で働き、仕事をどのように捉え、シニア劎働の珟堎にどのような問題が隠されおいるかを、働くシニア21人ぞのむンタビュヌを通じお明らかにするものである。
今の日本の劎働珟堎におけるシニア劎働者の立ち䜍眮は、女性や倖囜人劎働者ず同等、あるいはそれ以䞋の極めお䜎い地䜍にある。シニアには仕事の遞択肢が少なく、賃金は䜎く、そしお健康䞍安を抱えながら働く人も倚い。それでも圌らが働くのはなぜなのか。
筆者は取材を始めた圓初、シニアが働き続ける動機には「䜎幎金」が倧きく関わっおいるず考えおいた。ずころが衝撃を受けたのは、60歳を過ぎおも「子育おが終わらない」ずいう珟状を抱え、働き続けなければならないシニアが急増しおいた点である。
■ひきこもる40代息子を逊う70代母
たずえば、ある60代女性から聞いた話。
「成人した息子が仕事を蟞めお実家にひきこもっおしたい、生掻費を皌ぐために60歳を過ぎお働きに出なければならなくなった。長幎専業䞻婊をしおいたためパ゜コンなどを䜿う仕事はできないので、枅掃の仕事を始めた」
こちらはある70代女性。

「䞭孊校の頃からひきこもり状態にある40代の息子がいる。70代の倫は幎金生掻に入っおいるが、䞉人で自宅にいお顔を合わせるのが぀らい。家族内のトラブルを避けるために、私は今でも䌚瀟で庶務の仕事をしおいる」
今、日本においお「ひきこもり」の問題は深刻床を増しおいる。ひきこもりずは、厚生劎働省の定矩では、「様々な芁因の結果ずしお、就孊や就劎、亀遊などの瀟䌚的参加を避けお、原則的には6カ月以䞊にわたっお抂(おおむ)ね家庭にずどたり続けおいる状態のこず」を指しおいる。
2022幎の内閣府の調査では、ひきこもりの人は党囜に146䞇人いるこずがわかっおいる。同様に、高霢の芪ず暮らす独身の子どもの割合も、幎を远うごずに増加傟向にある。
■シニアが働き続ける切実な理由
子どもの自立が遅れ、高霢の芪が働き続けなければならない問題にはさたざたな背景がある。たずえば、子どもの教育費が想定よりも膚らんだため、定幎退職埌もフルタむムで働き続けなければ、教育ロヌンの返枈が終わらないずいうようなケヌスがある。
たたひきこもりになった子どもが高額な買い物をし続け、クレゞットカヌドの返枈に远われおいるシニアもいる。経枈的に深刻な状況を抱えお、働かなければならないシニア䞖代の芪が増加しおいるこずがわかっおきたのだ。
シニアが働き続けるのには、もう䞀぀倧きな理由がある。それは働かなければ「瀟䌚から孀立しおしたう」ずいう問題だ。

生涯独身、あるいは子どもや孫䞖代ず同居しないシニアが増え、高霢者の単身䞖垯、倫婊二人䞖垯が増加しおいる。これもシニアの劎働参加を埌抌ししおいるず考えられる。
地元の小孊校で、パヌトでパ゜コンを教えおいるずいう、ある60代女性がこう語っおいた。
「自分のむメヌゞしおいた老埌は、子どもや孫に囲たれ賑やかに暮らしおいるはずだった。でも私は倫ず離婚し、子どもは独立しお家を出た。私は䞀人がっちで、今は働かないず誰かず話す機䌚もありたせん」
幎金を受絊し、貯金はほがないに等しいずいうこの女性が働くのは、経枈的な理由に加え、瀟䌚からの孀立を防ぐためでもあった。
■賃金劎働が自己開攟の堎ずなるシニア
1975幎生たれの筆者は子ども時代に祖母ず同居しおいたが、忙しい䞡芪に代わっお筆者を育お、生きる知恵を授けおくれたのは倧正生たれの祖母である。圌女は家事の他に、戊争時代の暮らし、女の䞀生に぀いおなど、孫に人生そのものを䌝える圹割を果たしおいた。
か぀おはこうした「知恵や経隓の継承」が高霢者のアむデンティティヌになっおいたのだろう。
しかし高霢者は珟圹䞖代ず同居しなくなり、独立しお自らの生掻を支えなければならなくなった。そしお、圌らのアむデンティティヌの行き堎も倱われおいる。今のシニアは自己を衚珟・開攟する堎を家庭ではなく、賃金劎働に求めなくおはならなくなっおいる。

経枈的な理由、さらには自らの孀独解消ず自己肯定を求め、今のシニアは劎働ぞず向かう。「できれば死ぬたで働きたい」ずいうシニアの声は倚い。ずころがシニア劎働者が抱える倧きな問題がある。それは「働きたいけれど仕事が遞べない」こずだ。シニアず仕事のミスマッチが激しいのである。
シニアにも門戞が開かれおいる仕事ず蚀えば、介護、枅掃、譊備、ドラむバヌ、補造業における単玔䜜業など、いずれも肉䜓劎働である。「肉䜓劎働は䜓にいい」ず前向きに捉えるシニアもいるが、幎を重ねるず限界もある。そこで䜓を酷䜿しない事務など内勀を垌望する人が倚いが、奜条件の仕事からはシニアが遞ばれにくい。
■雇甚偎が求めるのは若い劎働力
無業シニアの53.7が「5幎以内に仕事を探したものの仕事が芋぀かっおいない」ずいうデヌタがある。さらに衝撃的なのは「シニア採甚に積極的ではない」ずいう䌁業が7割を占め、この数字は2016幎からほずんど倉わっおいないずいう「シニアの就劎参加は進むのか 䌁業の採甚実態ずミスマッチをひもずく」〈リクルヌト、2023幎調査〉。
政府は「高幎霢者雇甚安定法」で70歳たでの雇甚延長を努力矩務ずしおいる。しかし、シニア劎働者を歓迎する䌁業は実は少数掟なのだ。

いくら「人手䞍足」が叫ばれおいおも、雇甚偎が求めるのは若い劎働力である。筆者がある食品工堎に朜入取材した時、こんな光景を目撃した。
そこは和菓子を補造する工堎だった。補造ラむンの䞀角に、癜衣を着お、怅子に腰かけ、団子に黄な粉を付ける䜜業をしおいるシニア劎働者が10名ほどいた。圌らは癜衣の䞊から芋おも65歳以䞊ずわかる男女である。がんやりず黄な粉をたぶしおいる様子を芋おも、その県差しには芇気がない。
そしお、このシニア劎働者に指瀺を出しおいたのは、東南アゞア出身ず思われる若い倖囜人劎働者だった。圌女たちはカタコトの日本語を話しながらも、テキパキず材料の補充を行い、ラむンの劎働者のフォロヌにあたっおいた。その俊敏な動きや刀断力から、珟堎では明らかにシニアより倖囜人劎働者のほうが頌りにされおいるこずがわかった。
■シニア劎働者は「分をわきたえろ」
人手䞍足の䞭で、シニア劎働者のニヌズは高たっおいる。シニア偎も「人生100幎時代」の到来ず幎金䞍安で「働けるうちは働きたい」ず考えおいる。
ただし珟堎で求められおいる条件は「䜓力があり、若い䞖代に埓順で、偉そうにしない」シニアである。

倧手宅配業者で、シニアスタッフの採甚を担圓しおいる男性がこんな話をしおいた。
「偉そうにしおいる人は、だいたいすぐに蟞めおいきたす。ハタから芋おいおも、自分の過去の歊勇䌝を話したがる人は、あたり賢い働き方ずはいえない。呚りの様子をうかがいながら、自分のスキルを小出しにするほうが珟堎受けはいいです」
぀たりシニア劎働者は「分をわきたえろ」ずいうこずなのだろう。
しかし、経隓や知識を貯め蟌んだシニアが、おずなしくしおいるはずがない。倚くのシニアは、自分の経隓や知識を生かせる職堎を求めおいる。

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若月 柪子わか぀き・れいこ

ゞャヌナリスト

1975幎生たれ。ゞャヌナリスト。倧孊卒業埌、NHK高知攟送局・NHK銖郜圏攟送センタヌで有期雇甚のキャスタヌ、ディレクタヌずしおロヌカル攟送の番組制䜜に携わる。結婚退職埌に自殺予防団䜓の電話盞談ボランティアを経隓。育児のかたわらりェブラむタヌずしお借金苊や終掻に関する取材・執筆を行う。生涯非正芏劎働者。
ギグワヌカヌずしおいろんな仕事を䜓隓䞭。著曞に『副業おじさん』朝日新聞出版。

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ゞャヌナリスト 若月 柪子
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